ジャズ音楽初のレコーディング
ジャズが生まれた日というのはありませんが、数百年の間で進化を遂げてきたということはたしかです。ジャズの最初のレコーディングの痕跡は、1917年2月26日、「オリジナル・ディキシーランド・ジャズ・バンド」の5人のメンバーが、ニューヨークの38番街にあるビクタートーキングマシン社のビルの12階までエレベーターに乗って上がっていったところから始まります。彼らはそこで「Livery Stable Blues」という曲を録音しました。
驚くべきことにこのバンドは、若い白人男性五人組の編成でした。彼らが「Livery Stable Blues」を録音したとき、全員が白人のこのオリジナル・ジャズ・バンドは、盗作ともいえるレベルで、生まれ故郷のニューオーリンズで聞いたアフリカ系アメリカ人たちの音楽の真似をしたのでした。実際にこの曲は、100万枚以上の売り上げを記録したヒットシングルとなりました。
ジャズ音楽のルーツ
このあまり知られていないジャズの歴史は200年を優に超えており、アメリカ社会初期においてアフリカ系アメリカ人たちの周りの社会的また文化的構造をカバーするものです。はい、それはアフリカ人たちがアメリカ大陸に輸送され、まだ奴隷制度に縛られていた植民地時代にまでさかのぼります。
歴史におけるこの時期は、南部にアフリカの伝統的な文化と音楽が一気に流入し、1800年代の初期のブルースの技術の誕生に大きく貢献しました。興味深い技術の例の一つは、曲の演奏の際のホモフォニーとヘテロフォニーの和声、また並列のボイシングでした。これは、歌手が同時に歌っていたとしても、音程は互いに正確に三度の関係になるということです。この時代にもたらされた最も特筆すべきメロディの発展の一つはブルースノートでした。これらは、メロディーに味を加えて悲しげでブルージーな感じを与える、音階のフラット化（半音下げ）された三度と七度の音で、現代のジャズ音楽やブルースにおいても広く使用されています。
初期のブルースにおいての目に見えるもう一つのサブサハラアフリカの要素は、部族の歌における「コールアンドレスポンス」（掛け合い）でした。これらの歌は元々、市民権や宗教問題への民主的な参加の方法として機能していました。アフリカからの奴隷たちは植民地時代、これらの伝統をラグタイム、ゴスペル、また教会のその他のヨーロッパのキリスト教音楽の伝統などの西洋の影響と組み合わせ、それらの音楽的機能は、初期のブルースの起源においてもそのままでした。
時は流れ、1800年代後半のブラスとマーチングバンドの台頭が大衆文化の最前線を形作りました。これは、主に1890年代から1920年代に至るまで、アメリカとヨーロッパの社会を強く支配していた音楽的愛国心の重要性の高まりによって促進されました。奴隷制に縛られることのなくなった多くのアフリカ系アメリカ人のミュージシャンたちが、ますます人気が高まるばかりのブラスバンドに参加するようになりました。やがて、彼らはラグタイム、ブルース、ゴスペルなどの伝統的な要素を取り入れて、自分たちの文化遺産を改めて握り始めました。
ブルースの発展は、南部からシカゴと中西部の州に向かって移動していきましたが、南部は音楽の発展の最前線にとどまり続けていました。時間の経過とともに、典型的なフランスカトリックの文化がアフリカの文化と混ざり合い、アメリカの「クレオール」文化への道を切り開きました。社会の中のこのサブカルチャーは、言語、価値観、食べ物、またもちろん音楽においても独自のバリエーションを時間の経過とともに発展させていきました。
ニューオーリンズの街でのクレオール文化の台頭により、この地域のアフリカ系アメリカ人のミュージシャンたちは、1900年代初頭にますます人気が高まっているブラスバンドのダンスチューンと自分たちの音楽を組み合わせました。この新鮮なブルースの解釈は、たとえば1895年から1900年の間にコルネット奏者のチャールズ・「バディ」・ボールデンの音楽を生み出しました。彼は即興のブルースを流行中のより速いテンポのダンスチューンに取り入れました。この功績から、彼は多くの初期のジャズミュージシャンたちから、音楽史における「ジャズ」が生まれる道を切り開いたイノベーターとして認められています。
この発展は同時に、多くのジャズ編成が弦楽器よりも主にブラス指向の楽器に焦点を当てている理由の説明でもあり、それが当時の室内セッティングにおける一般的な配置形式でした。社会における特別な地位からクレオール色を取り除いた社会法と同時に、これらのミュージシャンたちは、アップタウンの即興スタイルからより多くの音楽スタイルを取り入れました。その結果、コルネット、クラリネット、トロンボーンから構成される、ニューオーリンズのジャズバンドの典型的な最前線の形が生まれたのでした。
1900年代初頭、初期のジャズ音楽は、社会における社会的イベントの重要な部分を担うようになりました。これはミュージシャンたちに多くの仕事の機会をもたらしました。ジャズは、ニューオーリンズとその周辺地域の日常の一部となったのでした。その成功が増し加わるにつれて、初期のジャズは他の都市にも広がり始めました。それは、ショーツアーの一部となり始め、また、それが初の商業的成功を現実のものとするのは時間の問題でした。
ジャズの誕生
ここで時は1917年2月26日にうつりました。「オリジナル・ディキシーランド・ジャズ・バンド」の白人たちによる音楽的編成がニューヨークで彼らの曲をレコーディングし、それは大成功を収めました。この時点から、ジャズ音楽は独自の音楽ジャンルとして、またその音楽ジャンル全体として見られるようになりました。その起源は、アフリカ系アメリカ人のコミュニティに根ざしていましたが、その成功はニューヨークの「白人」ミュージシャンたちによって急速にもたらされたものでした。
ジャズ音楽の新たな需要から、ますます多くのジャズミュージシャンたちが北へと移動していきました。これにより、より多くの雇用機会が生み出され、さらに北部の州は、アフリカ系アメリカ人の市民により良い社会的条件を提供しました。これは、ジョー・「キング」・オリバー、シドニー・ベシェ、ルイ・アームストロングなどの多くの有名人たちが登場する時期です。彼らは皆、初期のニューオーリンズジャズの伝統に貢献し、そこに独自の影響を加えていきました。アームストロングが組み込んだ見事なソリストとしての芸から、「スウィング」時代のシーンを決定するジェリー・ロール・モートンのピアノ作品まで、それらすべてが、私たちが忘れてはならないルーツを持っていました。
ピアニストのユービー・ブレイクは、1983年の亡くなる前のナショナル・パブリック・ラジオのインタビューで、次のように述べています。「ブロードウェイがそれをピックアップしたとき、彼らはそれを「J-A-Z-Z」と呼びました。それは正しい呼び方ではありませんでした。本当は「J-A-S-S」と綴られていました。それは下品だったし、それが何かを知っていたら、女性の前では言えないでしょう」と語っています。
Livery Stable Bluesのレコーディングの数か月後、5人はバンド名をオリジナル・ディキシーランド・ジャズ・バンドへと永久に変更したのでした。
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参照
African Americans in New Orleans: The Music. http://nutrias.org/~nopl/exhibits/black97.htm
Gerhard Kubik, Bebop: A Case in Point. The African Matrix in Jazz Harmonic Practices. Black Music Research Journal, 2005年3月22日公開
Harold, A Treasury of Afro-American Folklore: The Oral Literature, Traditions, Recollections, Legends, Tales, Songs, Religious Beliefs, Customs, Sayings and Humor of People of African Descent in the Americas. New York: Marlowe & Company, 1976.
Jazz Origins in New Orleans. https://www.nps.gov/jazz/learn/historyculture/history_early.htm
The Origins of Blues Music. https://www.allaboutbluesmusic.com/the-origins-of-blues-music/
The Painful Birth of Blues and Jazz. https://blogs.loc.gov/folklife/2017/02/birth-of-blues-and-jazz/
Mysterious Origins of Jazz. https://www.bbc.com/culture/article/20170224-the-mysetrious-origins-of-jazz
